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事業税ってどんな税金ですか?
個人事業主は、「所得税」とは別に「個人事業税」を納める義務があります。
納付額は、所得税の確定申告を行うと都道府県により計算されてきますので、自分で計算する必要はありません。
送付されてきた通知書に従って納税することになります。
納付期限は8月と11月の年2回です。
では、青色申告者の場合、納付額はどのように計算されるのでしょうか?
まず税率ですが、業種によって3%~5%ですが、ほとんどの業種は税率5%です。
税額は、「青色申告特別控除」を控除する前の事業所得又は(及び)不動産所得から、事業主控除290万円を差し引いたものに、税率5%を掛けた金額です。
つまり、年間の事業所得又は(及び)不動産所得が290万円以下の場合は、個人事業税を納付せずに済みます。
例えば、確定申告書の「事業所得」が585万円、青色申告特別控除65万円の場合、
(585万円+65万円-290万円)×5%=18万 となります。
ちなみに、所得税と同様に、前年の赤字を繰り越して所得から控除することができます。
所得税や消費税に気を取られてどうしても忘れがちになってしまうのが事業税です。
事業税の納付書が送られてきて驚いてしまうことのないように、事業税も意識しておくようにしましょう。
事業税の詳細は、都道府県のホームページなどが参考になります。
神奈川県(http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/kenzei/p13806.html)
確定申告については、税務署や青色申告会に相談してみてください。
配偶者控除とは?103万円の壁って?
配偶者控除とは?103万円の壁って?
配偶者控除とは、納税者に収入が少ない配偶者がいる場合に、納税者の所得から控除を受けられる制度のことです。配偶者控除を受けることによって夫の所得税と住民税が安くなります。
配偶者控除の金額は38万円が原則ですが、配偶者の年齢が70歳以上の場合や特別障害者である場合、または2つのいずれも当てはまる場合などでは、それぞれ48万円、73万円、83万円と控除できる金額が変わります。
配偶者控除の条件は以下の通りです。
・年間合計所得金額が38万円以内
・他の人の扶養親族でない
※専従者給与を取っている場合は配偶者控除が付けられません。
では、「パート勤務の収入は103万円以内に抑えた方がいい」「103万円の壁」という話とはどのような関係があるのでしょうか?
この「103万円」が配偶者控除を受けられるかどうかの境目となります。
「配偶者控除の条件って38万円じゃないの?」と思われるかもしれませんが、「合計所得金額が38万円」と「収入が103万円」は同じことなのです。
パート勤務の収入は、給与所得控除として最低65万円差し引くことができます。
そして、差し引いた結果が「合計所得金額」になります。
つまり、パート収入を103万円以下に抑えることで、合計所得金額を38万円以下にするこができるのです。
例)パート勤務の収入103万円の場合
103万円(収入)-65万円(給与所得控除)=38万円(合計所得金額)
→配偶者控除OK
例)パート勤務の収入104万円の場合
104万円(収入)-65万円(給与所得控除)=39万円(合計所得金額)
→配偶者控除NG
ですが、38万円を超えた場合も、合計所得金額が38万円超76万円未満(給与の年収でいうと103万円超141万円未満)の場合、配偶者特別控除が受けられる可能性があります。
(納税者本人の合計所得金額が1000万円以下である必要があります。)
配偶者特別控除の控除額は以下の通りです。
配偶者の合計所得金額 |
配偶者特別控除の控除額 |
38万円を超え40万円未満 |
38万円 |
40万円以上45万円未満 |
36万円 |
45万円以上50万円未満 |
31万円 |
50万円以上55万円未満 |
26万円 |
55万円以上60万円未満 |
21万円 |
60万円以上65万円未満 |
16万円 |
65万円以上70万円未満 |
11万円 |
70万円以上75万円未満 |
6万円 |
75万円以上76万円未満 |
3万円 |
76万円以上 |
0円 |
ちなみに、「130万円の壁」は個人事業主の配偶者には存在しません。
配偶者の収入が年間130万円までならば、夫の会社の健康保険を利用できますが、会社員などで社会保険に加入されている方が対象なので、個人事業主の家庭では関係ありません。
メリットが多い「小規模企業共済」
節税しながら将来の生活資金を確保できる国の制度があります。
それが「小規模企業共済」という制度です。この制度では掛金を払い込んだ分だけ節税することができ、払い込んだ掛金は事業を廃業したときなどに退職金として受け取ることができます。
「小規模企業共済」は、独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営しており、40年以上の歴史がある制度です。
払い込んだ掛金は、全額が所得控除の対象となります。つまり、掛けた分だけ節税なります。「貯金のつもりで積立てると、税金が安くなる」ということです。
掛金は月額1,000円から7万円の範囲(500円単位)で自由に設定でき、仮に最大の7万円の場合は、年間84万円の所得控除が受けられます。支払額の変更も可能です。
また、「契約者貸付制度」が存在するため、積み立てている金額の範囲内で共済から資金を借りることもできます。資金繰りに困ったときの資金調達の手段になります。
個人事業主は自分に退職金を支給できないので、将来の備えにもなり、節税効果も大きい小規模企業共済を検討してみてはどうでしょうか。
小規模企業共済は、中小機構の委託団体(商工会議所、商工会、中小企業団体中央会、中小企業の組合、青色申告会など)で取り扱っています。興味を持たれた方は相談してみてください。
個人事業主が支払う税金とは
個人事業主は、確定申告をすることで、自分が支払うべき正しい所得税額を計算し、自分で支払います。
そして、個人事業主が支払う税金は、所得税だけではありません。
これらの税金は、すべて「総収入金額」や「課税所得金額」の額によって変わってきます。
①所得税
所得税は、1年間に得た所得に課せられる税金です。基本的に確定申告をして納めるものです。(会社員は毎月の給与から源泉徴収され、会社が支払います。)
②住民税
住民税は、所得に課せられる「市区町村民税」と「都道府県民税」のことを指します。納税のための手続きはありません。確定申告を済ませれば、自治体が計算してくれます。(会社員は所得税と同様に、給与から天引きされ、会社が支払います。)
③健康保険料(国民健康保険税)
保険料も所得によって変わります。また、40歳以上の加入者には、医療分だけでなく「介護分」の保険料が上乗せされます。
④個人事業税
個人事業税は、個人事業主に課される税金です。所得金額に応じてかかります。申告手続きは住民税と同じです。
⑤消費税
事業主は、消費者が払った消費税を、代わりに納める義務があります。ただし、前々年度(基準期間)の課税売上高が1000万円以下の場合は、納税の義務はありません(免税事業者)。
所得税、消費税についての相談は税務署か青色申告会に。住民税、健康保険、事業税についてはお住まいの自治体にご相談ください。
税務調査に備える
個人事業主も、税務署の「税務調査」を受けることがあります。
ちなみに、税務署からの問い合わせが全て「税務調査」とは限りません。
添付書類の不足や計算ミスの連絡もあります。
居留守を使ったり、無視したりすると、かえって目を付けられてしまいます。
きちんと対応してください。
税務調査は、税務署の職員が事務所に来て、帳簿書類を調べ申告が正しかったかどうかを確認するのが一般的です。
原則として、電話で事前に連絡が来るようです。
もし税務調査が入った場合は、聞かれたことに誠実に答えましょう。
わからないことや記憶があいまいなことは無理に答えず、きちんと調べて後日連絡するようにします。
では、税務調査の対象となりやすい人はどんな人なのでしょうか?
以下のようなケースに当てはまる場合は要注意です。
・売上が多い(前年より極端に増えた)
・利益率が極端に良くなった(または同業他社より極端に低い)
・過去の調査で大きな追徴を受けた
次に、税務調査で着目されやすいポイントを挙げておきます。
・「期ずれ」(売上や費用が正しい事業年度に計上されているか)
・売上が漏れていないか
・個人的な支出を交際費として経費計上していないか
申告が正しくないと判断された場合は、不足の税金を支払うことになります。
それに加えていろいろな罰金がかかってきます。
税金を払いたくないために税金をごまかすと、結果的に高いお金を払うことになります。
もちろん、きちんとした経理作業をして、書類の整理と保管を普段からきちんと行っていれば、税務調査は決して怖いものではありません。
税務署や青色申告会を利用すれば、正しい記帳や書類管理の方法について学ぶことができますよ。
従業員を雇うとき
従業員を雇うときは、どうすればいいですか?
個人事業主でも、従業員を雇うことができます。
従業員を雇うときは、「給与支払事務所等の開設届出書」を税務署に提出しなければなりません。
「源泉所得税の納期の特例に関する申請書」もセットで提出しましょう。毎月の処理が年2回で済むようになり、経理の手間が省けます。以下の説明はこの申請書を提出した前提になっています。
上に記載した届出を提出すると、以下の書類が税務署から送られてきます。
・月々の給与の支払を記載する「源泉徴収簿」
給料を支払うときは、事業主が従業員の所得税を天引き(源泉徴収)して、税務署に納めます。
まずは、従業員の扶養家族を把握します。
従業員には、毎年最初の給与をうける前日までに、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出してもらいましょう。
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は国税庁HPでダウンロードできます。
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_01.htm
月々の給与が決定した時に、給与額と扶養の状況を「源泉徴収税額表」に照らし合わせて、源泉徴収の税額を決定します。
給与額と源泉徴収税額を「源泉徴収簿」に記入するのをお忘れなく。
従業員には、給与額から源泉徴収税額を差し引いた金額を支給します。
源泉徴収税額は「預り金」になります。納付が必要なお金になりますので、使ってしまわないようにしてください。
そして、7月10日までに1月~6月までの分を、1月20日までに7月~12月までの分を「納付書」を使って納付します。
納付書を持って金融機関に行って「預り金」を納付してください。
給与額が少なくて源泉徴収税額が発生しない場合も、「納付書」を税務署に提出して、支払状況の報告をする必要がありますのでご注意ください。
慣れるまでは、この一連の処理は難しく感じるかもしれません。
従業員を雇うことになったら、まずは税務署や青色申告会に行って、直接説明を受けた方がよいかと思います。
納付の時期には、納付書の作成を手伝ってもらえますよ。
帳簿等の保存期間
帳簿等の保存期間って?
個人事業をしている人は、日々の取引の状況を記録(記帳義務)し、また、取引に伴って作成したり受け取ったりした書類を保存(保存義務)する必要があります。
青色申告であろうと白色申告であろうと、記帳と記録保存は必要です。
まずは、青色申告の帳簿書類の保存期間を紹介します。
区分 |
具体例 |
保存期間 |
帳簿 |
仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳など |
7年 |
決算関係書類 |
決算書、棚卸表など |
7年 |
現金預金関係書類 |
領収書、預金通帳、小切手帳、借用書など |
7年 |
その他の書類 |
納品書、請求書、送り状、見積書、契約書、領収書控えなど |
5年 |
白色申告の場合は、区分と保存期間が違ってきます。
「この紙はどの区分に当てはまるの?」「保存期間は何年なの?」と迷うことも多いと思います。面倒くさいですよね。
結論→とりあえず何でも7年保存しとけば大丈夫!
保存方法は紙です。届出により許可を得れば、電子データによる保存が認められるものもありますが、とりあえず原本を紙で保存しておけば安心です。
ちなみに保存をしていない場合は、税務署による税務調査が入った時に大変なことになります。青色申告を取り消されて青色申告の特典がなくなり、追徴課税を受けることもあります。怖いですね。置き場所に困るという話も聞きますが、必ず保存するようにしましょう。
帳簿書類の保存期間について詳しく知りたい方は、税務署や地域の青色申告会で質問してみてくださいね。